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政治と心理

- 心理のメカニズムを知る -
​防衛機制、認知バイアス、認知の歪み、自他境界、他者視点の取得


防衛機制


 

防衛機制(適応規制)とは

​​​

「脳が"いやだな、怖いな"と危機を感じた時に、

       身を守るために起こす無意識の反応・反射」のことです。

感情や思考より先に発生するものと言える、保健体育の教科書にも載っている概念です。

​ 

誰にでも起こるもので、それ自体は精神の安定のためにとても重要な、脳に備わった機能です。

心を守ったり落ち着いたり、自信や元気を得たりするメリットがあります。

​しかし、人間である自分はそういった反応をする生き物だということを知らず認識できないと、

​自分自身や人間関係に良くない影響を及ぼしたりといったデメリットもあります。

 ​

防衛機制を知ることは、自分を理性的にコントロールすることに繋がり、

主権者が理性と知性を獲得することは、成熟した社会に繋がります。​

​ 

政治にも影響する防衛機制をいくつか挙げていきますので、

経験や心当たりがないか見ていきましょう。

​​

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否認

実際にあった出来事や事実を

無いものとして扱う、嘘や誤りとして

受け入れがたい不快な現実や

ストレスを無意識に無視・拒否して

安心を得る反応。

​ 

「SNSで流れるニュース記事はデマ」、​

「石油危機は起きていないので

​心配する必要はない」としたりする

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同一化

自分にないものを持つ他者を真似たり

自分を重ねたりして劣等感から逃れたり

自信や自尊心の代わりとする。

 

​自分を重ねている対象が批難されると

自分が否定されたように感じ、

不安になったり攻撃的になる。

​ 

対象が人間であるとは限らず、

​「日本は強い国=日本人の自分は強い」

と、国と自分を同一視する場合もある。​

 

自国が強い国でないと不安なので、

日本の低自給率や輸入依存などの

都合が悪く危うい面を直視するのが

難しくなるなどの問題がある。

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投影

 自分の中の受け容れ難い感情や欲求を、

相手のものと思い込み押し付ける反応。

  ​
恐怖を感じる国に対し〇〇人は

日本を怖がっていると決めつけたり、

自分が感情的になっている​時に

​感情的なのは相手だと認識したりする。

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置き換え

​(転位)

欲求不満や怒りなどを、正当な対象ではなく

より安全でぶつけやすい相手に向ける。

​ 

政治の場合は、政権を批判せず

支持者や考え方の違う他の主権者を

​叩いてストレスの捌け口とする、

デモの参加者を攻撃するなど。

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自己正当化

(合理化)

受け入れがたい失敗や欲求不満に

もっともらしい理由(言い訳)をつけて

自分を納得させる防衛反応。

いわゆる「すっぱいブドウ」。

​ 

​支持政党・支持してきた自分を

守りたい気持ちから不祥事の報道を

「他党もやっているから問題ない」

「本人が知らないと言っている」などとする。

​ 

類似した概念に「認知的不協和」がある。

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知性化 

不安や苦痛を感じること、

 理解が難しいことに対し感情を切り離し

知識や論理だけで処理したり

過度な知的活動でごまかす。

​ 

知識や理屈を本当に理解し

 自分のものにできれば良い対応となるが

しばしば難しい言葉を使うことで

わかったつもりになり安心感を得て

満足してしまうため注意が必要。

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​逃避

嫌なことや不安なことを避けて

距離を置くことで精神の安定を保とうとする。

​ 

「ここでは政治の話をしない」ということにして、

実際には政治について考えたり話したりする

場や時間を持つことをしない、

為政者では​国会など質疑の場から逃げる など

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退行

赤ちゃん返りと呼ばれる、

ストレス下で幼稚な発達段階に戻る反応。

叱られた時に相手の顔を見られず、

説教をされている間

そっぽを向きプリントをいじって

やり過ごそうとするなど。

​防衛機制そのものは、脳が自動的に起こすもの、自然なことであり、

防衛機制が起こること、起きたことは「その人のせい」ではありません。​しかし、それが

どんな心理によるものであっても、言ったこと・やったことの責任は他の誰でもなくその人のものです。

自分は何を感じているのか、どんな欲求があるのかを把握することは、

自分自身を理性的にコントロールするためにとても重要です。

防衛機制を知ることで、自分の感情や状態を

一歩引いた客観的な視点で見ることができるようになります。

​こういった視点を持てる能力は「メタ認知」と呼ばれます。

認知バイアス

認知バイアスとは

​ 

物事を判断する際に経験や先入観、感情、信念などに影響され、

無意識に起きる思い込みや偏りのことです。

脳が効率的に情報を処理しようと思考をショートカットすることによるものですが、
合理的でない意思決定や誤った判断をしてしまう場合があります。

 

様々な種類が定義されていますが、

政治に関しても発生しやすい代表的なものを挙げます。

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正常性バイアス

「安心していたい」という心理から、

都合の悪い情報や受け入れがたい状況を

​無視したり過小評価して

精神の安定をはかる反射。

​ 

津波の避難指示を「大丈夫でしょ」と

甘く見て避難できなかったり、

「戦争の可能性」と言われて、根拠なく

「大げさ」「そんな怖いこと言わないで」

​「まだ戦争なんて決まってない」と

言ってしまったりする。

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同調バイアス

安心の欲求や帰属意識によって
周囲の意見や行動に合わせる心理傾向。
「みんなと一緒」という

精神的安定が得られるが、
客観的な考慮や判断をさまたげる。

​ 

周囲の基準を優先して

自分自身の判断基準が曖昧になり、
多数派に引きずられた

意思決定になりやすくなる。
 

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確証バイアス

無意識に自分の信じたいものを見てしまい、
自分の考えや仮説に合致する

情報ばかりを集めたり重視し、
反する情報を軽視・無視してしまったり、

先入観を持って物事を判断してしまう。

 
意見の感情的な対立や、

考え方が極端に固まる要因になる。
 

認知の歪み

認知の歪みとは

​ 

物事のとらえ方や考え方が極端にかたより、

現実をネガティブに解釈してしまう「思考の癖」のことです。

​ 

認知の歪みは防衛機制と同様に、誰にでもある自動的な反応ですが、

ストレスや不安、うつ状態を引き起こしたり、

コミュニケーション不全による人間関係の悪化や

社会活動上での問題を生じさせたりする原因となることがあります。

認知の歪みを知ることも客観的視点のための助けになるので、

代表的な10パターンを挙げます。

白黒思考

​(全か無か思考)

物事を極端な二択で捉える認知。
中間や程度の違いを考慮せず、

善か悪か、AかBか、100点か0点か

といった判断をする。

​​

​ 

・試験で満点以外は"全然ダメだった"と感じる。

​ 

・人と人、国と国との関係を

​"敵か味方か"しかないと思い込む

選択的注目

​(心のフィルター)

状況の中の一部の否定的要素だけに注目する。
全体像を見ず、特定の出来事だけを根拠に

評価を決める。

​​

​ 

・褒められた点が多くても

一つの批判だけを気にして落ち込む。

 

・​過去の不祥事や失敗を理由に、

現在の言動を確認・再評価することをしない

結論の飛躍

十分な根拠がないまま判断を確定させる。
相手の考えを決めつける読心や、

未来を悲観的に断定する予測が含まれる。

 

​例

​ 

・返信が遅いと嫌われたんだと思い込む。

 

・反対意見を見て「愛国心がない」と決めつける。

感情的決めつけ

感じている感情を事実の証拠として扱う。
「不安だから危険だ」

「嫌な感じがするから間違っている」と判断する。

​ 

​ 

「あの人はよく笑う感じのいい人だから

  きっと仕事も良くしてくれる」と思う。

 

 

レッテル貼り

特定の行動から人物全体を決めつける。
単一の失敗や特徴をもとに

人格や集団を固定的に評価する。

​ 

​ 

・仕事のミスで「自分は無能だ」と

人格全体にレッテルを貼る。

 

・他人の意見の一部だけを見て、

​「右翼」「左派」などと決めつける。

過度の一般化

一度の出来事や、ごく限られた事例から

広く大きな結論を導く。
少数の経験を根拠に

「いつも」「みんな」といった

全体的評価に拡大する。

​​​

 

​ 

・​一つの失敗から"自分はいつも失敗する"と感じる

 

・一部の不祥事を見て、政治家は

全員信用できないと考える。​

マイナス思考

良い出来事や成功を重要でないものとして扱う。
評価される事実があっても、「たまたま

「誰でもできる」などとして受け入れない。

​​

​ 

・人から褒められても「お世辞だ」と受け取る。

 

・外交で成果があっても

「誰がやっても同じだった」とする。​

拡大解釈と過小評価

失敗や問題を実際以上に重大だと感じる。
同時に自分の成果や能力は小さく評価する傾向。

 

​ 

・小さなミスは"取り返しがつかない"と感じるのに
努力や成果は"大したことではない"と軽く見る。

 

・批判的な党の政策ミスを国家的危機に感じる。
一方で自分の支持政党の成果は

「それくらいのことで」と扱う。

​​​

すべき思考

「こうあるべき」「そうすべき」という規範を

強く当てはめる。
現実がその基準から外れると

怒りや罪悪感が生じる。

 ​

 

​ 

・「自分は失敗してはいけない」と考えて

強いプレッシャーを感じる。

 

・「政治的要望はこの手続きでするべき」

と他人に強要する。

個人化

(自己関連づけ)​

自分と直接関係のない出来事を

自分への評価や責任として捉える。
外的要因や他者の事情を考慮せず、

自分に原因を帰属させる。

​ 

 

​ 

・友人の機嫌が悪いと、自分が

何か悪いことをしたのではないかと感じる。

 

・SNS等の不特定多数に向けた発信を

自分に向けられた言葉だと思い込む

自他境界
​(バウンダリー)

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自他境界とは

 

​​​「自分と他者は別個の存在、別な人間である」という心の境界線のことです。

どこまでが自分の考えや感情で、どこからが相手のものかを区別するための感覚です。

 

自他境界には大きく分けて

・他人の領域を自分に取り込む
・自分の領域を他人に広げてしまう 

の2パターンがあります。いくつか具体的な事例を挙げます。

・他者の評価や反応で気分が大きく左右される

・相手の機嫌が悪いと「自分のせいかも」と過剰に抱え込む
・自分の考えと周囲の意見の区別がつかなくなる
・自分の価値観を無意識に相手にも求めてしまう

・政府政党や議員への批判を「自分が責められている」と感じる
・政治に関する意見が異なると自分の価値観や考えが脅かされた気がする
・「国=自分」と捉え、政権批判に強い恐怖や不安を感じる​​​​​​​​

 

 

​自他境界が曖昧だと、

他人の気分に振り回されたり、逆に相手に自分の考えを押し付けてしまいやすくなります。

適切な境界線を意識して、相手を尊重しながら自分自身を守れることが理想的です。​​

他者視点の取得
​(パペクティブ・テイキング)

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他者視点の取得とは

 

​​「その人の立場に立って物事を見てみること」。

「自分がその人だったら何が見えるか、どう思うか」など

他者の視点や感情・意図を想像して推測する能力、またはそれを行うことです。

他者理解を深めるために​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​するもので、共感は必ずしも必要ではありません。

​​

「別な人間になったつもりで想像する」が難しい場合は、

​相手の状況や属性などの条件の方を

自分のものとして仮定すると想像しやすいかもしれません。

(自分を動かすイメージではなくその人の条件を自分に設定するイメージ)

​まとめ
複合的事例

​​​

ここで挙げた心理的反射や認知や思考の癖などは

私にもあなたにも、メディアを運営する人にも国会議員にも、

どんな誰にでも起きるものです。 ​​

 ​

そしてこういった心理現象は多くの場合は複合的に起こり、

また全ての反応に名前が付けられ分類されているわけではありません。

​ 

以下はその具体例となりますが、読み進める前にひとつ確認をしておきます。

これは「非常によくある例の提示」であり、

あなたを含む特定の誰かを批判するものではありません。

​ 

ここでする話はすべて「人間みんな」の一般論に過ぎず、

これを読んでいるあなたに向けた攻撃ではないことを、

ここでいったん再確認して、次に進みましょう。

​​​​

​ 

・ある人が「政府に向けた戦争反対」をSNSで発信したり

 デモに参加したりしているのを見て、そういったことをしていない人が

 「やめてほしい」「そんなことはしない方がいい」と反対や批判をする

これは防衛機制「同一化」や認知の歪み「個人化」による反応の場合もありますが、

「大きな怒鳴り声にびっくりして怖い、不安、自分が怒られている気がする」という、

ごく単純で本能的な反応(闘争か逃走反応)が、インターネット上の文章や

コンテンツに対しても起きただけというケースも多くあります。

​ 

そして、戦争に反対する人の口を塞ごうとしてしまうのも、

「置き換え(転位)」や認知の歪みのようでいて、単純に

「今見えているものに対して最も手っ取り早い解決方法を無意識に選んだ」結果として、

「いま自分の前に現れた言葉を黙らせる」という形で

安心を得ようとしていることもあります。

​​​

政治に関する場合は特に、「怒り」というものに対して耐性がなく、

怒ること自体を良くないものと認識していたりする場合にこの傾向が強まります。

​​

​​

表現や思想の自由は憲法によって全ての人が生まれながらに持つ権利です。

誰かとの個人的な会話の中で

「"私に"その話をしないでください」と言うことはその人の権利ですが、

​「あなたは○○の話をしないで」「○○の話はしない方があなたのためですよ」と

阻害や抑圧をすることは、他者を支配しコントロールしようとする行為となり、

他者との境界を侵略した、憲法に反する人権侵害です。

絶対にやってはいけないことであり、またされてよいことではありません。

これは、相手のためにという思いからであったり、優しく丁寧な言い方であっても、

また親子や友人であったとしても変わらず許されないことです。​

​​​

一度出した言葉はなかったことにはなりません。

反射で誰かの権利を侵害しないために、SNSの送信ボタンを押す前に、

自分は今どんな状態かを見つめられるよう、メタ認知を育てましょう。

 

心理に関する知識やメタ認知の能力は、他者への配慮だけでなく

それを持つ人自身の漠然とした不安を軽減し、精神的な安定をくれる心強い味方です。

メタ認知はどうやって身につける?

​ 

まずは「これらの心理現象という概念を知ること」です。

今これを読んでいるあなたは、

心理的な反射や歪みを知ったり再認識したりして

すでにメタ認知レベルが上がっています。

ですので次は、

「自分が不安を感じていることを認めて見つめられるようにする」のが大事です。

不安を感じることは身を守るために必要なことです。

弱くて恥ずかしいことではありません。生き物として無くてはならない感覚です。

​​​

あとは

「モヤモヤした時"自分はなぜ今そう感じているのか"と考えること」を意識しましょう。

​例えば誰かに何かを言われて嫌な気持ちになった時に、

「自分は何に対してどう感じたのか」を考え、自分の感情を正しく把握して、

できるだけ言語化して自分に説明してあげられるとメタ認知が育ちます。​

ただ、防衛機制を始め、これらの心理現象は

「精神の安定のためにある脳のシステム」です。

無理に最初から「できるようになろう」と目指すと

かえって心身に負担がかかる場合もあります。

心理現象を24時間いつでも

完璧に把握しコントロールできる人はいないので、

「できるようになった」ということもありませんから、

まず知っているというだけで大きいのです。

​​

こういった心理的概念について ここで初めて知った方は特に

今日はもうすでにたくさがんばっていますので、

これを読んだ今日からではなく、ご自分のタイミングで

気が付いたときに少しずつ意識してみることをおすすめします。

 

​​​​​

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